1990年代の始め頃、20年以上も昔の話です。
柴田書店という出版社から月刊で発行されていた、「喫茶店経営」という雑誌の自家焙煎店特集号の巻頭言で、『将来、確実にコーヒー豆の家庭用需要が増加すると思うが、その3割を、街の自家焙煎店で供給することができるだろうか』という予言が掲載されていたのを記憶しています。
20年以上の年月が経過した2015年、その予言は的中しています。
当時、コーヒーは喫茶店で飲むのが一般的だったわけですが、家庭やオフィスでコーヒーを飲む習慣が、まさに始まろうとしていたのだと思います。
エカワ珈琲店は、その頃にコーヒー豆の自家焙煎を開始して、家庭やオフィスをターゲットとした焙煎コーヒー豆の小売商売で、一時的な繁盛を手にしました。
あの頃、コーヒー豆の家庭用需要は未開拓の市場でしたから、エカワ珈琲店のような、小売主体の小規模ロースターが、その手付かずの市場で、ある程度の地位を占めることができたのだと思います。
1990年代の後半から、コーヒー豆の家庭需要やオフィス需要に対する、大手・中堅ロースターの大攻勢が始まりました。
それと平行して、エカワ珈琲店の衰退も始まりました。
エカワ珈琲店の近くのコンビニエンスストアーやスーパーマーケットの商品棚には、大手・中堅ロースターのレギュラーコーヒー豆が並んでいます。
アメリカやヨーロッパでは、コーヒー豆需要の7割が家庭用需要だと考えられています。
2015年の日本、20数年前と比べると、コーヒーの家庭用需要は相当に増加しているのだと思います。
その家庭用コーヒー需要の大半は、大手・中堅のコーヒーロースターの市場となっているのだと思います。
2015年現在、家庭用コーヒー需要に占めるコーヒー豆自家焙煎店(マイクロロースター)のシェアーは、10%以下だと推定されています。
コーヒー豆自家焙煎店(マイクロロースター)の店舗数を考えると、この数値は、あまりにも低すぎるような気がします。
スーパーマーケット、コンビニエンスストアー、量販店、百貨店のコーヒー売り場などでのレギュラーコーヒー需要を観察していると、20何年か前、家庭用コーヒー需要を手探りで開拓していた頃との環境の変化を体感できます。
2015年の現在、あの頃とは、環境が全く変わってしまっているのだと思います。
大手・中堅ロースターが開拓してくれた、20何年か前とは比べものにならないくらい多くの家庭用コーヒー需要が存在しています。
そして、スターバックスコーヒーやブルーボトルコーヒーが、アメリカから日本に新しいコーヒー文化を運んで来てくれています。
もしかしたら、これから、コーヒー豆の自家焙煎店(マイクロロースター)の飛躍の時代が始まるのかもしれません。
考えてみれば、大手・中堅のロースターと零細なコーヒー豆自家焙煎店とでは、基本的な部分で文化が異なっているわけですから、「シェアー10%以下」という数字は、もしかしたら、零細コーヒー豆自家焙煎店(マイクロロースター)の将来性を保障してくれているのかもしれません。