喫茶店の事、思いつくままに

【1】喫茶店が生き残るには

1980年代のはじめ頃、店舗数10数万店を数えていた個人経営の喫茶店ですが、1990年前後になると約13万店舗と、数年の間に3万店舗から4万店舗も減少していました。

そして、巷間では、「喫茶店からのコーヒー離れ」という風評が流れていたわけです。

 

当時の業界雑誌は、そのような風評が流れる原因として、次のような原因が指摘しています。

インスタントコーヒーが全家庭・全職場に普及・浸透したこと、自動販売機の缶コーヒーが売れていること、レギュラーコーヒーが家庭や職場で楽しまれるようになったこと、喫茶店で飲むコーヒーを美味しいと感じなくなったことの4点です。

 

で、その雑誌記事には、それらに対する対策も書いてありました。

飲食店の中で、最もお客さんと触れ合う機会の多い商売が喫茶店だということ、カウンター内での手作り・手仕事が、お客さんの共感を作り出す商売だということ、飲食店商売の中で、最も自由奔放にアイデアを生かせるのが喫茶店商売だということ、以上のような強みを持っていることを、忘れてはいけない。

 

自販機のような商売をしていけない、右のものをそのまま左へ売る商売をしてはいけない。

アイデアを生かして、ものを創り出す、個性ある店作りをするべきである。

そうすれば、小さなお店であっても大きな強みが生まれるわけで、生き残る方策も自然と生まれてくるものである。

というような内容だったと記憶しています。

 

その記事を書いたのは、生前、高名なコーヒー研究家で「かなざわ喫茶村」の村長をされていた鞍信一さんです。

20年以上も前の記事ですが、現在でも通用する内容の記事ですから、やはり鞍信一さんは、私たちコーヒー屋の偉大なる大先輩なのだと思います。

 

【2】時間つぶしに行く喫茶店から、コーヒーを買いに行く喫茶店へ

時間をつぶしに行こう、ちょっと会話をしに行こう、誰々さんに会いに行こうなどと、喫茶店に「コミュニティー空間」を求めた時代は確かに存在していました。

昭和40年代・昭和50年代のことで、時間が余れば喫茶店という雰囲気が社会に満ち満ちていました。

 

喫茶店は、コミュニティー空間を提供するサービス主体の商売で、コーヒーや軽食の販売は「おまけ」だったわけです。

ですから、冷凍食品・レトルト食品主体の軽食や、どの店も同じ焙煎屋さんのコーヒー豆を使っていても、それなりに繁盛することができたのだと思います。

 

それも昔のことで、現在、喫茶店の店舗数は全盛期の半分以下になってしまっているのですが、減少傾向が止まりそうにありません。

社会の雰囲気が変わってしまったのか、喫茶店が変わってしまったのか、その両方なのかと考えたりするのですが、どうしても喫茶店が変わってしまったとは考えられません。

 

社会の雰囲気が変わってしまっているのに、喫茶店が昔のまま変化していないから、喫茶店が儲からない商売になってしまったのだと思います。

時間つぶしにも、友人・知人との会話にも、誰々さんとの出会いにも、喫茶店を利用する必要が無くなってしまったのだと思います。

 

だとすると、喫茶店も変らなければ生き残れないわけです。

サービス業としての喫茶店の比重を小さくして、物販業の比重を大きくするのが一番簡単な生き残り方法だと思ったりしています。

 

時間をつぶしに行く喫茶店から、コーヒーを買いに行く喫茶店に変化する方法を模索するべきだと考えたりするわけです。

コミュニティー空間の提供は、コーヒーを買ってもらった「おまけ」なのだと考えるわけです。

 

【3】喫茶店のタイプ

一言で喫茶店といっても、日本の喫茶店には3つのタイプがあります。

サービスを売るタイプの喫茶店と、モノを売るタイプの喫茶店、それにモノとサービスを売るタイプの喫茶店です。

 

サービスを売るタイプの喫茶店は、貸席業・時間提供業です。

インターネットカフェやカラオケ喫茶などが、そのサービスを売っているタイプの喫茶店になるのだと思います。

ホテルの喫茶ラウンジのように、高級な雰囲気の喫茶店もサービスを売るタイプの喫茶店ですが、このタイプの喫茶店は客単価が採算に合わないということで、ほんの僅かしか存在していません。

 

モノを売るタイプの喫茶店ですが、コーヒーをモノ(商品)として売っている喫茶店で、ファーストフードチェーンのマクドナルドやモスバーガー、コーヒーチェーンのスターバックスなどがこのタイプです。

コーヒーを売っているわけですから、カウンターでお客さんにコーヒーを渡して代金を頂戴すれば、その段階で商売が終了しています。

店舗に設置している客席は、「おまけ」ということになります。

 

そして、個人経営の大半の喫茶店ですが、そのどちらのタイプでもなくて、サービスとモノを売っているタイプの喫茶店なのだと思います。

雰囲気やサービスを売る貸席業と、コーヒーの商品価値を売るモノ販売業をミックスした商売になっています。

 

でも、客単価があまりにも低すぎるということと、客数の減少傾向に歯止めがかからないということで、サービスとモノの両方を売っている喫茶店の衰退が、もう20年以上も続いています。

このタイプの喫茶店は、客単価が低いという問題をクリアしない限り、できるだけモノを売る喫茶店に近づく努力をすることでしか、生き残れないように思います。

 

客単価の低すぎる個人経営の喫茶店が、サービスを求めるお客さんをターゲットに商売を営むことなど、まず不可能な時代になっているのだと思います。

居心地の良さだけなら、個人経営の喫茶店はファミリーレストランに勝てるはずが無いわけで、店とお客さんのレベルが低下して行くだけだと思います。

 

【4】喫茶店商売の再構築

フルサービスで個人経営の喫茶店、その弱点は客単価が低すぎることだと考えています。

極端な話、雰囲気の良い快適な環境下で、400円~500円のコーヒー1杯で、1時間でも2時間でもくつろげる場所、それがフルサービスの喫茶店です。

 

で、喫茶店を営む方はというと、朝から晩まで休み無く働いて、手にする報酬はそれほど多くありません。

人件費や家賃を支払っているのなら、下手をすれば赤字になることもあります。

利権商売でも無い限り、楽して儲かる商売などまず有り得ないのですが、同じ労働量・労働時間なら報酬が高いに限ります。

ということで、個人経営の喫茶店は減り続けているのだと思います。

 

おそらく、もう、伝統的な喫茶店のビジネスモデルは、儲からないビジネスモデルになってしまっているのだと思います。

でも、アメリカでは、個人経営の喫茶店・飲食店は結構儲かっているみたいですから、日本でも、少しだけビジネスモデルを変更すれば、儲かるビジネスに変身する可能性もあるわけです。
 

限られたスペースを最大限に利用するということで、主力商品のあり方、店の周辺にいる人々の生活を、もう一度じっくりと調査研究して、喫茶店商売を再構築する必要があるのかもしれません。

何はともあれ、商売人は儲けることが一番の使命なのですから。

 

【5】個人経営の喫茶店

1980年代、個人経営の喫茶店が全盛だった時代、喫茶店の商圏人口は800人くらいだと言われていました。

日本全国どこに行っても、ちょっと探せば喫茶店が存在していて、同じような店の作りで、同じような値段の同じような商品・サービスが提供されていたわけです。

 

同質化してしまって、ありきたりで、誰もが簡単に営める商売になってしまった喫茶店は、個人経営では儲けられない商売になって行きました。

その後、喫茶店需要は喫茶店だけのものでは無くなってしまって、飲食業界全体に分散してしまって、個人経営の喫茶店の衰退がはじまって、21世紀の現在においても、その衰退現象が継続しています。

 

そこで、個人経営の喫茶店にも、何か活路がないものだろうかと考えてみました。

個人経営の喫茶店の衰退現象は、喫茶店の同質化によって始まったのですから、異質化することで活路を見出すことができないだろうかと考えるわけです。

 

同質化すると、資源力・資本力の勝負となるわけですから、そのような弱肉強食的な市場で、個人経営の喫茶店が生き残るのは至難の業です。

喫茶需要のボリュームゾーンについては、資源力・資本力のある事業者たちに任せることにして、個人経営の喫茶店は異質化の道を模索するしか、生き残りの道が残っていないと考えたりしています。

 

もし私が、現在、まだ喫茶店商売を営んでいたとするならば、喫茶店商売やコーヒーにのめり込んで、わが道を行くという経営手法を採用することになるだろうと考えています。

喫茶店商売やその商品であるコーヒーを、ものすごく好きになってのめり込むことなくして、何とか生き残る方法など考えつきません。

何はともあれ、資源力・資本力のある喫茶店経営者の物真似をしても、喫茶店需要のボリュームゾーンで生きて行くことは、個人経営の喫茶店では、まず無理だろうと考えています。

 

【6】コーヒーショップ考

1980年代、最盛期の喫茶店の店舗数は約16万店舗で、焙煎業者の名前の入った看板を掲げた均質化した個人経営の喫茶店が、街のあちこちに存在していました。

 

その個人経営の喫茶店ですが、コーヒーショップチェーンの台頭などが原因で減少傾向が続いていて、2009年の現在、最盛期の半分、約8万店舗にまで減少しています。

個人経営の喫茶店とは反対に、企業経営の低価格型コーヒーショップや高価格型コーヒーショップの店舗数は、増加傾向にあるということです。

 

マクロの世界では、確かにそうです。

だけど、まだ8万店舗もの喫茶店が残っているのですから、個人経営の喫茶店に対する需要が無くなってしまったとは、どうしても考えられません。

 

低価格型コーヒーショップというのは、価格訴求の強い低マージン・高回転型の商売です。

この場合、価格は十分に安くなっていますから、競合は、付帯サービスでの競争ということになります。

サービスの質を上げれば、商品の価格にもはねかえってきます。

 

そうなれば、技術革新によって、新しいサービスをより低価格で提供するチェーンが現れれば、古いチェーン店は、市場から追い出されてしまいます。

ようするに、弱肉強食のすさまじい競争社会です。

個人経営の喫茶店が、そういう市場に入っていって、大手のチェーン店と競合するなんて、バカげた話です。絶対に、競合を避ける必要があります。
 

高価格型のコーヒーショップというのは、客層によって、繁盛する・しないが決まってしまいます。

事業会社の経営する高価格型のコーヒーショップの場合、個人店と違って、常に成長を続ける必要があります。

 

成長を続けようと思えば、客層の幅を広げなければなりません。

客層の幅を広げれば、初期の頃のお客さんは、徐々に少なくなってしまい、最終的にはお客さんが入れ替わってしまいます。

その段階で、必然的に高価格型コーヒーショップの成長が止まってしまいます。
 

個人経営の喫茶店の営業目的は、第一に、生活の糧を得ることにあります。

生活さえ成り立てば、店主好みの客層だけをターゲットとして、商売ができます。

昔ながらの喫茶店の競合相手ですが、チェーンの喫茶店(コーヒーショップ)だけではなくて、ファミリーレストランやファーストフードのチェーン店とも競合状態にあります。

ファーストフードのチェーン店で、若い人たちだけでなくて、相当に年配の人たちも、新聞を読みながらコーヒーを飲んでいるわけです。

 

そのような時代ですから、これからも、個人経営の喫茶店は、その数を急激に減少させ続けると考えています。

おそらく、個人経営の喫茶店で生き残れるのは、「喫茶店商売が大好き」という店主の経営する店だけだろうと考えるわけです。

 

【7】日本の喫茶店とアメリカの喫茶店

日本の喫茶店業界は衰退を続けていて、アメリカの喫茶店業界は活況を呈しています。

なぜ何だろうと、ずっと、考えているわけです。

 

その理由の一つとして、商圏人口の違いがあるのかもしれません。

日本の喫茶店がものすごく元気だった1980年頃、日本の喫茶店の商圏人口は800人といわれていました。

現在(2007年)、活況を呈しているアメリカの喫茶店の商圏人口は1万人だとされています。

 

昭和の時代、コーヒーといえば、喫茶店だけで売っている高級な飲み物でした。

だけど、商圏人口800人の市場で、コーヒー中心の商売が成り立つはずがありません。

喫茶店が飲食コンビニエンス化することで、商圏人口800人でも商売が成り立っていたのだと思います。

 

利益率が高くて手間隙かけずに提供できるのがコーヒードリンクですが、食事メニューだと利益率が悪くなります。

手間暇も必要になり、コストが高くなりますから、場所貸し商売をするには無理が生じてきます。

 

そして、1990年頃ともなると、コーヒーは、職場でも、家庭でも、飲食店でも、どこででも、低価格で、あるいは、無料で飲める普通の飲料になっていました。

コーヒーを取り巻く環境が変化しているのに、商圏人口800人の商売を営んでいるから、喫茶店の衰退が続いている可能性もあるわけです。

 

もしかしたら、ここ日本でも、喫茶店の商圏人口は、アメリカと同じくらいの1万人なのかもしれません。

アメリカの喫茶店市場ですが、家庭や職場だけでなくて、至る所で、誰もが低価格か無料のコーヒーを飲むのが当たり前の環境のもと、成長してきました。

そのような環境のもとで喫茶店商売が成り立つ条件が、商圏人口1万人なのかもしれません。

 

1996年、スターバックスが日本の喫茶店市場に進出してきました。

そして、僅か数年で、日本の喫茶店市場を席巻してしまいました。

日本の喫茶店の大半は商圏人口800人の商売を営んでいたので、商圏人口1万人の喫茶店市場は無風状態にあったのだと思います。

 

商圏人口800人の喫茶店市場は、これからも衰退を続けて行く可能性が高いと思いますが、商圏人口1万人の喫茶店市場は、アメリカの喫茶店市場を観察していると、まだまだ成長する可能性があるように思います。

 

【8】喫茶店商売のデザイン

かつて、コーヒーは街中の喫茶店で飲むか、その喫茶店から出前してもらう飲み物でした。

コーヒーと消費者が出会う場所ですが、喫茶店しか存在しなかったわけです。

 

その喫茶店ですが、1980年~1985年頃が頂点で、その後、店舗数・売上ともに減少を続けていて、街中のいたるところに存在していた喫茶店も、その数を減らし続けています。

何とか残っている喫茶店も、客数・売上は全盛期の数分の一くらいにまで落ち込んでいる店が大半です。

 

何故、日本の喫茶店が衰退してしまったのかと考えることがあります。

おそらく、従来型の喫茶店需要が衰退しているのに、日本の喫茶店に新しい市場を開拓する能力が欠けていたからだと解釈しています。

 

今も昔も、喫茶店の大半が生業の個人店ということで、衰退しているといっても、従来型の喫茶店需要をターゲットに商売を営めば、ある程度の客数と売上を見込めるということもあって、新しい市場を追い求める重要性を認識していなかったのだと思います。

 

1980年以降、コーヒーと消費者の出会える場は拡散を続けています。

ファミリーレストランで、ハンバーガーやドーナツのファーストフードチェーン店で、オフィスでのオフィスコーヒーサービスで、外食店ではランチに付随していて、美容室や理容室・整骨院・自動車の販売店などでサービスに提供されたりと、コーヒーと消費者の接点が爆発的に拡散しているわけです。

 

そのような状況下で、生業経営の喫茶店は衰退を続けて来て、今も衰退を続けているのですが、それは、生業経営の喫茶店に市場をデザインする能力、新しい市場を探し出す能力が欠けていたからだと、最近、考えるようになっています。

 

新しい市場は存在していないわけではなくて、すでに何処かで存在していると考えるのが現在のマーケティングの常識です。

コーヒーの喫茶市場でも、ドトールコーヒーやスターバックスのように、新しい市場を探し出して成長を続けている企業もあるわけです。

 

これも、飲食マーケティングの常識だと思うのですが、個人店や小規模な企業店の市場占有率が50%を割ることなど、喫茶・飲食業界についてはまず有り得ないわけです。

ですから、零細小規模の喫茶店・飲食店の未来は、それほど悲観的なものでは無いのだと考えています。

 

ということで、零細小規模の喫茶店も、そろそろ、どのようなお客さんをターゲットにして、どのような商品(コーヒー)を、どのようにして販売するのかということを、真剣に考えなければならない時期に来ているのだと思うわけです。

何も考えずに、何も行動を起こさずに、何年も何年も、ただ同じことを繰り返しているだけでは、沈んで行くだけだと考えたりするわけです。

 

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